イラストレーター中村佑介さんにQ&A

イラストノートのホームページにて『イラストレーターの中村佑介さんに聞きたいこと』をテーマに、質問を募集したところ、たくさんの質問が寄せられました。お送りいただいた読者の皆さん、ありがとうございました!誌面に載せきれなかった質問も含め一挙ご紹介します。

Q:イラストレーターの仕事をしていく上で、締切よりも大切に思っていることはありますか?また、これまでに締切を破ってでもそのことを尊重した経験はありますか?(ティコ)

A:基本的に締切やスケジュールというものは、クライアントと印刷所と販売店、つまり制作者側のためのものなので、同じくらい購入者の目線に立った「ずっと手元に置いておきたい」となれる丁寧な完成度も大切だと思っています。同じダイヤモンドでもガタガタの形な上にケースにも入っていないとなると、テンション下がりますからね(笑)だからいつも可能な限りスケジュールを延長してもらい、ギリギリまで制作の時間にあて、作品を研ぎ澄ましています。それを許して下さるクライアントの皆さまに感謝です。

Q:Twitter・LINEブログ・ツイキャスなど拝見させて頂いております。中村先生はイラスト・講演会・情報発信全てが丁寧で、かつエネルギッシュでタフな印象を持っております。時には「中村先生はもしかしてスーパーサイヤ人なのでは…」とつい思ってしまいます。興味本位で恐縮ですが、中村先生の「活動の原動力」は一体なんでしょうか?(麻未)

A:いまだ日本では「イラストレーター」という職業は、ほとんどの親御さんからしたら「半分遊んでる」と思われがちです。その証拠にほとんどの家庭では、子どもが年頃になり「イラストレーターになりたい!」と言った時、反対までは行かなくとも「きちんと考えなさい(大丈夫かしら…?)」という姿が容易に想像できます。そこにあるのは職業への理解のなさと同時に、やはりこちら側も世間への情報発信が不十分なのではないかと考え、丁寧に取り組んでおります。こんなことを言うと、まるで聖人のようですが、上記の“子ども”にはやはり過去の自分を重ね合わせているので、結局は自分のためなのかもしれませんね。

Q:こんにちは。私は絵を描く時に考えながら描くことが苦手です。このモチーフはどうしてあるの?などの質問に答えられません…。絵を描いた後にその絵にどのような意図を持たせたのか、という説明が苦手です。中村先生は絵にメッセージを持たせる時にはまず、何から始めますか?絵をどのように考えて描きますか? よろしくお願いします。(藤原様)

A:決して「説明できる絵=良い絵」ではありませんが、仕事となるとクライアントを困らせてしまいますし、また口コミで広がるものは、何かしら言葉にしやすい特徴があります。その為、自分の場合は描く前に必ず、頭に浮かんだイメージを短い文章にして、それから絵にします。いわば家の土台つくりですね。すると「あ、この部屋はいらないな」「ここには窓が必要」というように、制作途中でも必要のあるモチーフと、ないモチーフが自分でもわかりやすく整理できます。ぜひ試してみてください。

Q:中村さんのイラストの美しい曲線、あれはフリーハンドなのでしょうか?とても気になっておりましたので宜しくお願い致します!(ポ須崎)

(※イラストノート40号誌面メイキングのコーナにご参照ください。)

Q:中村さんにとって『描く』ということの根源になっているものとはなんですか? その反対に『描きたくないもの』または『描かないもの』や表現として使わないもの、というものはありますか?(タッキー)

A:いつまでも新鮮な気分でいたいので、苦手こそ大好物、モチーフとして描きたくないものはありません。ただし仕事として描く(関わる)べきではないと思っているものは、既存作品を模倣した商品のパッケージです。たとえば「アジカンみたいに」や「謎解き〜みたいに」という依頼は、長い目でみると生産的でないどころか、消費者の混乱を産むだけですので、日銭には惑わされないよう注意しています。

Q:私は構図が苦手なのですが、どうやったらいい感じになりますか?(鈴花)

A:いちばん無難には、日本国旗のように「シンメトリー(左右対称)」にすれば安定した画面になりますが、それだけでもつまらないですよね。そのためには、ものごとを捉えようとする時に「構図」や「とか」や「いい感じ」という曖昧な言葉は使わずに、きちんと理解し、分解すれば、次第に見えてくることもあります。たとえば構図というのは、画面上にあるモチーフの<大きさ><角度><位置>のことですよね。この3点を意識しながら、まずはお気に入りの作品をじっくり観察してみて下さい。

Q:中村先生がしていた人物画の上達方法を教えてください。 中村先生のような人間らしい絵を描きたいです。(希)

Q:中村さんの絵が好きであんなに上手く書きたいな っておもうのですがひとの身体を書く練習ってどうしてましたか?(トマトマト)

A:僕も大学生まで、「一向に絵が上手くならないなぁ〜」と悩んでいたのですが、ある日、イラスト、アニメ、漫画など、絵の人間を参考にしなくなった途端、人の絵がきちんと描けるようになりました。つまり実物ということですね。試しに周りにいるご家族、ご友人をスケッチしてみて下さい。5分でも5時間でも時間は問いませんが、かならず全身を入れて、毎日続けます。同じ人物でも構いません。そして3カ月後、自分の絵に戻ると、驚くほど上達していることがわかります。

Q:28歳、美容師と主婦をしております、さゆりと申します。私は寝る前にほぼ必ずスマホを操作・見ながらいつの間にか眠りについて朝を迎える事が習慣づいてしまっているのですが、 中村さんは 就寝前に必ずやること、または やってしまうなどありますか? 著名な方の生活サイクルが気になります。ちなみに私のスマホ閲覧内容は ほぼ2チャンネルやゲームのことなどです…。おはずかしい…。よろしくお願いいたします。(さゆり)

A:わかります。寝付きの悪さから、僕も必ず何かしらの映画(DVD)をつけながら眠るようになりました。ほとんどの映画は結局最後まで見てしまうのですが、その中でも『メンインブラック3』だけは、劇中のニューラライザーのごとく、はじまった瞬間に寝てしまうことに気付きました。そうこうしているうちに、パブロフの犬の如く、せっかく映画館に行っても、その作品がおもしろければおもしろい程、途中で眠ってしまう身体になってしまいました。お互い、おはずかしい限りですね(笑)。

Q:絵で食べれるようになったのは何歳くらいからでしょう?主な収入源はなにですか? 結婚されていますが、中村さんの性的なジェンダーの問題はどうなっているのですか? 芸術系の人は、反転しているか両性的な人が多いと聞きます。(塵芥時路)

A:美大卒業後、自作のポストカード販売や個展、アルバイトなどをしながら、23才くらいからギャラのある仕事がぽつりぽつりと来るようになって、26才くらいで絵だけで生活できるように。28才くらいでようやく風呂ありの住居に住めるようになりました。おそらくですが、同性愛やバイセクシャル、また半陰陽の方は、芸術や芸能系の自由な雰囲気でカミングアウトしやすいだけで、潜在を含めると一般社会でも同じ割合でいらっしゃると思います。僕はヘテロセクシャルですが、それは単なる偶然の多数派への所属なだけで、たとえば少数派であっても、それぞれがノーマルだと認識しています。良くも悪くも特別視がなくなればいいですね。

Q:私は水彩イラストが大好きで、ですが、なにが描きたいのかな…とか描いているうちに自信をなくしてしまいます…友達や好きな人はお前の絵好きやで と言ってくれるのですが…。(すん)

A:「自信」とは、特にこの場合、“知らない人からの評価”を指すのだと思います。そして自分や家族・友人ではない、不特定多数からも評価される絵は共通して「絵に興味のない人もわかる見どころ」が存在します。つまり、センスや画材ではなく、制作時間や丁寧な仕上げという非常に現実的な制作工程です。すんさんがどのような絵を描かれているかわかりませんが、一度、「これ以上ムリ」という自信作を、公募展などに出し、知らない人からの視線を受け止めてみて下さい。思ったより評判は良いだろうし、思ったよりご自身で反省点も見つかると思います。その先にあるのが自信だと僕は思います。応援しております。

Q:私は中学3年生の受験生です。なので進学する高校ですごく迷っています。私の夢はイラストレーターです。なので美術科のある高校か、イラストの専門学校(高校の資格が取れる)に行きたいと思っております。中村さんは高校はやはり美術科のある高校に行ったのでしょうか? また、イラストレーターに就職するのは大変ですか? 大変なのは親からも言われておりますがどんなものなのか、イラストレーター様から聞きたいです。(受験生)

A:はじめまして。中学3年生でもう将来の希望が決まっているなんて、すごいです。僕の同い年の頃は「イラストレーター」という職業名も知らなかったくらい、もっとぼんやりとしていたので、普通高校の文系コースに進学しました。話は更にさかのぼり、幼稚園や小学生の頃って、クラスのほとんどが絵を描いていませんでしたか? それが3、4年生になると半数に減り、中学に上がるとほとんどいなくなります。だから受験生さんも、そんな現状がさみしくて、専門科のある高校に進学したい気持ちもどこかにあるのだと思います。ですので、ほんとうに大変なのは、イラストレーターになることではなく、大人になっても、なかなかプロになれなくても、一人ぼっちでもなお「絵を描き続けること」なのです。どんな道筋でも良いので、まずはそこまで歩いてみましょう。その後のことは、書籍『みんなのイラスト教室』に詳しく書いておりますので、そちらを参考にしてください。

Q:佑介先生は1枚のイラストの中にたくさんのモノを描き込んでいることが多いイメージですが、何か一つのモノを描くとしたら、何を描きますか?選んだモノのどこが魅力的ですか?(嘘プラ)

A:やはり女性を描くでしょうね。竹久夢二さんの描いた背景も言葉も何もない、女性だけがただ立っているだけの絵の存在感が忘れられません。いつか僕も、あんな言い訳なしのシンプルな命を、紙に焼き付けてみたいです。

Q:学生時代に得意だった科目を教えて下さい!また、もし今学生時代に戻れるとしたら、どんなことを勉強したいですか?(レモン)

A:明確な答えが1つだけ出るものが好きなので、特に数学が好きで、熱心に勉強していました。そんな風に割と真面目に、絵と勉強に終始していた学生時代でしたので、もし戻れるとしたら、もっとたくさん友達と遊んで、早くから協調性の勉強をしたいですね(笑)。

Q:男性を書きたいなと思うときはありますか?(DJ)

A:例えば小説で登場人物に男性がいる場合は、ときどき描いているのですが、率先して描きたいモチーフではありませんね。僕が男性だから、鏡を見ているようで退屈なのでしょうね。

Q:中村さんはよく動物を描かれていますが、描いていて楽しい動物、また難しい動物はなんですか?(ゆう)

A:どんな動物も分け隔てなく描いていて楽しいのですが、マルチーズや羊、オランウータンなど、毛がモジャモジャしている動物は、今のシンプルな線を活かした画風に落とし込むのが非常に難しいので、いつかクリアしたいです。

Q:ひと月に平均何枚のイラストを完成させていますか? また一枚あたり完成まで平均何時間(何日)くらいかかりますか? 1日のうち、何時間くらい作業をしていますか? お仕事をしないオフの日はひと月に何日くらいですか?(もこ)

Q:中村佑介さんはデビューする前(イラストレーターになる前)に1日どのくらい絵を描いていましたか?また、現在は1日どのくらいの時間を仕事の時間に充てていますか?(chop)

A:アマチュアの頃も、プロになった今も、寝食以外はほぼ制作時間にあてておりますので、1日大体12〜15時間くらいです。それで10日くらいで1枚の作品が完成します。オフの日は月に2、3日、TVゲームをしているか、妻とどこかへ食事に行きます。

Q:中村佑介さんの描く女の子は横顔が多い印象なのですが、横顔が好きなのでしょうか(chop)

Q:中村佑介さんが描かれたイラストには女性が多く描かれていますが、それはなぜですか?? あと、なぜ横顔が多いのですか??よければご回答お願いします(^-^)(きか)

A:仕事なので、自分が好きなものを描くことはほとんどなく、人の横顔は匿名性が高くなるので、どんな人でも自分だと思って、絵に入りやすくするための工夫としてよく描いています。肌を塗っていないのも、同じ理由です。

Q:いつも楽しみに中村先生のイラストを拝見しています。イラストという一つの作品を仕上げる作業は地道で孤独なものだと思いますが、先生は作品を完成させ、また新しい作品をどんどんつくり上げるためにどうやってモチベーションを保っていますか? 心掛けていることなどありましたら教えて下さい。(かんべ)

A:いくらフォアグラの絵があっても、お腹が空いてたら、本当のにぎりめしに勝てないように、毎回作品を仕上げて思うのは、美しさも激しさも、ぜんぜん、現実の人間や世界に勝てないんですよね。だから僕の場合のモチベーションは楽しさや気持ち良さではなく、再現度や悔しさに重心が置かれています。負けたくないなぁと思い、またペンを取ります。

Q:中村さんが最近気になっているイラストレーターの方などはいらっしゃいますか?(あんまん)

Q:好きな画家さんや、気になっているイラストレーターの方などはいますか??(おつん)

A:最近の若い方では、色彩感覚や発想では有村はじめくん(twitter:@poruga777)、描写力や完成度では池上幸輝くん(@winter_parasol)、画材択びや空気感ではタムロアヤノさん(@murano305)に注目しています。

Q:学生時代や下積み時代にライバルのような存在はいましたか? また、イラストレーターになった今、憧れや目指したいと思うような人はいますか?(魅上 照)

A:漫画家の石黒正数くんは大学のクラスメイトだったので、職種は違えど、今も昔もライバル意識があります。目指したい人は、これまた業種が違いますが、さだまさしさんの上品さとユーモアのバランス感覚や、いつまでも盛んな創作意欲は永遠の目標です。

Q:こんにちは!イラストレーターかアニメーター志望の高校1年生です。私は今、美術大学か専門学校、どっちに行けばいいか迷っています。どっちに行くか決めて、勉強のモチベーション上げにもしたいです。そこで、美術大学と専門学校の違いは何か、中村佑介さんが大学にすすんだ理由など教えてください!おねがいします!(みゆこ)

A:こんにちは。僕の場合は、幅広く、絵以外のことも勉強したかったので、一般教養や学科も豊富な美大(大阪芸術大学)に進学しましたが、特にアニメやゲームなど、専門的なことに集中したい場合は、若く現役の先生が多い専門学校も良いでしょう。どちらに行くにせよ、キャンバス見学会になるべく多く参加し、素敵な先輩の作品と、気に入った先生がいれば、そこがあなたの行くべき学校なのだと思います。がんばって下さい。

Q:だんだん描き分けが出来なくなる、という時はありますか? また、あったらそんな時にはどうしますか?(ルテオ)

A:美大予備校時代のデッサン課題で、2日連続でリンゴが出されたので「これはもう描ける」と昨日と同じように描いたら「別のリンゴを出したのになんで同じになるの?」と先生に怒られたことがあります。そのように、描き分けが出来なくなるのは、慢心と手癖の結果なのかもしれません。世の中には似ているものはあっても、まったく同じものなど存在しませんから、常に対象物に対して、謙虚な姿勢で観察すれば、いつも新鮮な気持ちで、新鮮な作品は産まれます。あの時、先生に怒られて、ほんとうに良かったと思っています。

Q:風景や動物を描くときは資料を参考にされますか?それとも実際に見に行かれますか?(nico)

A:はい、資料なしに描くことは、どのモチーフにおいてもありません。行ける距離にある場合や、雰囲気を掴むためにどうしても必要な時は、実際に見に行きます。

Q:ギャラの交渉はどうやってされていますか。○万円未満なら受け付けないなど、ありますか。初めての仕事のギャラはいくらでしたか。買い叩こうとする人に出会ったときの対処法はありますか。よろしくお願いします。(志織)

A:生活と優先順位がありますので、たくさんもらえるに越した事はありませんが、たとえギャラが決して高くないと感じても、僕にしかできない意味のある仕事、誠意あるクライアント担当者、宣伝効果がある規模の大きい仕事、この3つのどれかに当てはまったら受ける事もあります。先行投資の意味合いもありますが、1カ月に1枚しか描かない訳ではないので、1年を総合的に見て、生活出来ればそれでいいかなと思っております。ですが、予算の都合以外で「描い叩く」というのは、あなたに価値を見出さず、同じクオリティーなら他の誰でも良いと思われている仕事で、後には繋がりませんので、上記のような可能性や興味が見出せない場合は「スケジュールの都合で…」と丁重にお断りした方が、ご自分のためにも、後続の作家たちのためにも良いと、僕は判断します。

Q:私は今イラストレーターになりたいと考えている22歳です。しかし、どのように仕事を頂くか(営業、人とのご縁、ネットに載せる、など)漠然とは分かったのですが、具体的なエピソードを知りたいと思いました。中村さんがイラストレーターとして初めて仕事を頂くまでの経緯と初めての仕事で困ったことがあれば教えて頂きたいです。(よこ)

A:最初の仕事は、ほぼ同時期なのですが、大学時代に一緒に映画をつくった友人がデザイナーになったので、その紹介で食品パッケージ(「博多の女」)を。同じく大学時代の先輩が小説を出版する際にその書籍表紙(「ヒナの魂」)がほぼ同時におりました。でもそれはたまたま予算とマーケットが増えただけで、以前から彼らとはお金を通さず、仕事(共同制作)をしていました。ですので、まずは周りの大人たちがなぜあなたに絵を頼まないのか、そこがポイントになってくると思います。そこから段々と仕事は広がり、やがて知らない方ばかりの中で仕事をするようになった時、請求書の書き方から挨拶、言葉使いまで、絵以外のことすべてに困りました(笑)。

Q:アジカンの1番好きな曲は? 好きな、ジャケは?(しゅーらい)

A:「お母さま、あなたはお子さんたちの中で一番好きなのはどの子ですか?」という質問に答えられる母親がいない様に、僕もこの質問には答えられない現状が、アジカンのメンバーとファンの方達に対しての誠意だと思っております。

Q:絵を描いていると輪郭線が細かすぎて画面がゴミゴミしてしまいます。線の上手な見せ方を教えて下さい。(づぼらなカボス)

A:絵がゴチャッと見えてしまうのは、線の種類ではなく、物の形が正確さに欠け、主役ではないものまで主張しすぎている場合が多いです。私語でさわがしい教室のような状態ですね。それに対し、ドット柄や格子模様はどれだけ続いてもうるさく感じないように、どうでも良いものこそ、適当に扱わず、丁寧に正確に描くと、緩和される問題だと思われます。お試し下さい。

Q:僕は現在大学3回生なのですが、未だに自分の絵柄が定まりません。そのときハマっているイラストレーターさんの描き方や世界観にすぐ影響を受けコロコロ絵柄が変わってしまいます。自分のある程度定まった絵柄が欲しいとずっと考えているのですがどうしたらいいのか分からず迷走中です。
(M)

Q:中村さんは絵を描き始めてどのぐらいで今の画風に落ち着きましたか? 私は、描きたいものの想像は膨らむのですが上手く描けず、結局絵師さんのイラストや写真を参考に模写で絵を描いており、独自の画風を見いだせずにいます。(18画)

A:僕も学生時代は、色々な方の影響を受け、なかなか絵柄が定まりませんでしたが、今考えると、やはりプロの方への憧れが強すぎた、いわばコスプレ期だったんですね。つまり「自分が何が出来るか」という現状より「他人(プロ)みたいになりたい」という背伸びの希望を優先していたのだと思います。ただしその頃の絵柄はバラバラでもどこかに共通点がありました。そしてその特徴は今の自分の作品にも残っています。以上のことから、オリジナリティとは、どこかから得るものではなく、すでにみんな持っていて「これは残すけど、これは諦めよう」という削ぎ落しの結果、最終的に残るものなのだと思います。なんて、大人になって気付いただけなので、今は続けるしかありません。みんなそんなもんです。

Q:”絵を描く"とはどういうことですか?(常人)

A:格好つけると「言葉以外のコミュニケーション」、ぶっちゃけると「芸術という衣を被った他者へのちょっかい」ですかね(笑)

Q:私は20代前半フリーターのものです。いつも中村先生のイラストを拝見し、時には模写をし、中村先生をとってもお慕いしております。この前はキララちゃんの模写をいたしました。(個人の趣味の範囲なのでSNSにあげる等は一切していません。)そこで本題なのですが、いつもイラストの組み合わせで私個人悩むことがありまして、中村先生のイラストはどういう組み合わせをいつも考えているのか気になっています。例えばキララちゃんのときは後ろに三日月と脱ぎ捨てたセーラー服、下にはバラとビーチ、セキセイインコもいました。それぞれに意味があると思うのですが、他の作品の時もですが色々なモチーフにはどういう思いを込められてるのか気になりました。 是非差し支えなければ教えていただきたく思います。Twitterをしていなかったのでこうして質問できることを大変嬉しく思っています。よろしくお願いいたします。(ケチャ子)

A:書籍『きららちゃん』の表紙の場合は、”アイドル”がテーマの本でしたので、歌、踊り、少女からの卒業、偶像、仕事終りの夜に戻るほんとうの姿など、それに乗っ取って伝わりやすい象徴、もしくはより可愛く見える演出としてのモチーフを択びました。他のイラストも同様の方法です。詳しくは画集『NOW』の巻末解説が参考になると思います。

Q:私がお聞きしたいことは2つあります。まず1つ目は、中村さんはアニメのキャラクターデザインのお仕事もされていますがご自身は、アニメをご覧になりますか? ご覧になるようでしたら、最近面白いと思ったアニメやお好きなアニメについてぜひお聞きしたいです!2つ目は、お仕事に関して一番嬉しい・楽しいこと(やりがい)と一番大変なことは何ですか?以上です。これからも中村さんの益々のご活躍をお祈りしております!(いつき)

A:プライベートでアニメはあまり見る機会がないのですが、『田中くんはいつもけだるげ』の独特な雰囲気と、丁寧なキャラクター設定が大好きで、最終回まで放送を追いかけ、原作コミックも既刊分は揃えました。仕事をしていて一番嬉しいのは、こんな風に仕事を通し出会った方と、仕事以外の話をすることかもしれません(笑)。

Q:中村先生こんにちは アジカンさんのジャケットを担当してますが PVの新しい世界 中村先生の絵が動いて アジカンさんの曲とマッチングして 涙が自然と溢れてきました またアジカンさんのPV作成予定は ないんでしょうか?(愛犬の似犬絵描いていただきありがとうございます!)

A:こんにちは。プロモーションビデオに関しては、その都度、映像監督が決めておりますので、あの素晴らしいアニメも、実はノータッチでした。かなりジャケットの世界観も広がって来たので、また機会があれば、今度は深く関わってみたいです。

Q:Twitterなどでさまざまな映画や音楽を話題にされていますが、主な情報源はどこからですか? あとどうやってそんなに時間つくってるんでしょうか?(FAIRY_RAVE_SOUL)

A:映画や音楽は、主に出張の移動時間や、寝る時などに楽しんでいます。情報源に関しては、映画だとスタッフロールから、気に入った作品の監督やスタッフの方の関わっている他の作品を見てみたり、音楽だと好きなミュージシャンが影響を受けた源流を辿ったりして、知識を広げています。こんな仕事をしているのに、ジャケ買いは全くしません(笑)。

Q:中村先生こんにちは。以前サイン会に伺った際、17才だった私は「10代のうちにやっておいたほうがいいことはありますか?」と質問させていただきました。先生は「絵に関しては自分の限界を決めないこと、生活では恋をしておくといいかな」と仰いましたが、なぜ恋をしておくといいのかが分かりませんでした。分からないまま、今19才で、まだ恋をしたことがありません。10代が終わる前に「なぜ10代のうちに恋をするといいのか」の疑問を解消させていただけますと嬉しいです。あと恋がしたいです。(oi汰)

A:oi汰ちゃん、こんにちは。いつも講演会に来てくれてありがとう。イラストレーターは自画像や自己表現ではなく、クライアントの代わりに他者を描くのが基本の職業です。その中でもとりわけ異性は、実際に恋をしたり、付き合ったり、結婚したりと、深い付き合いをしないと、なかなか心も本当のかたちも把握できません。かつてアダルトビデオを100本以上見ても、女性が描けなかったという僕が言うのだから間違いありません(笑)。そのように、どのような仕事が来ても良いように、表現の幅を広げる為に必要だと思っています。ま、そんな難しいことは抜きにしても、我々もやはり動物。単純に好きな人ができたら、創作も含めた全てのモチベーションが上がるので、その意味でも。

Q:中村さんは将来、イラストレーターの活動でやりたいことは何ですか?(わか)

A:一番の目標はおじいさんになってもイラストの仕事を続けていることですが、その中で、テレビゲームや映画など、まだ関わったことのないメディアと、絵を通して接していきたい所存です。

Q:中村先生初めまして。以前からお聞きしたいことがあります。それは、イラストにおける、風景ではない背景、イメージの背景はどのように考えて描いていらっしゃるのかということです。イラストを描くとき、日常の一場面ではなく人物を1番手前に置いてアピールしたいと思って描くと、後ろの背景はどのように描こう?となります。アイディアの出し方や上手くいく方法などありましたら教えていただきたいです。(ちひろ)

A:目的がないまま、「画面を埋めなければいけないのではないか?」という強迫観念だけで制作すると、何を描いたら良いのかわからなくなります。いわば、いきなり知らない人から「なんか喋って」と言われている状態です。だから最初にその絵を見た人をどういう気持ちにさせたいのかという、目的を決めましょう。「そんなこと言われても、もう何も考えず描き始めちゃった」という場合は、手前に描いたキャラクターに聞いてみるのが一番良いと思います。「あなたは何が好き?」「何色が好き」「どんな気持ち?」「今どこにいるの?」など。すると具体、抽象問わず、描くべきものが見えてくるでしょう。

Q:こんにちは!プロのイラストレーターを目指している美術系専門学生です。以前、プロのデザイナーの方のお話を聞く機会があり、その時「絵柄は複数の方が仕事が広がる」といったことをおっしゃってたのですが、最近「絵柄は一つの方が自分の強みが伝わり、仕事を頼みやすそう(募集しやすそう)では?」と思うようになりました。そこで質問です。プロのイラストレーターとして働くには、絵柄は複数と一つ、どちらがいいですか?(ふじささ子)

A:「ラーメン一筋」のような専門料理店も「和食も洋食も中華もあるファミリーレストラン」も需要があるように、どちらも正解ですので、質問者さまがどちらのような存在になりたいかで決めたら良いでしょう。

Q:私は人物のイラストを描くときに魅力的な目が描けなくて、目をどのような形にしたらいいか毎回迷ってしまいます。中村佑介さんの描くイラストは女性の目が輝いて見えますが、描き方で気を付けていること、工夫していることをお教えいただければと思います。よろしくお願い致します。(ひつじ)

A:絵は喋ることが出来ませんので、目はどういう意思が宿っているのかを現わす重要なポイントとして捉えています。たとえば、瞳の光は反射なので、その子が何か対象物を捉えている、つまり希望を見ている明るい状態を現わします。そのようにいつも答えは、頭の中や、誰かの絵ではなく、いつも目の前の現実にすでに広がっています。ですので「魅力的だな」と思う人間をよく観察し、真似してみてください。

Q:私は手塚治虫をはじめとしたトキワ荘メンバーの作品を好んで読んでいるのですが、中村さんはそのような古い漫画を読んだことはありますか?(志宝まうき)

Q:好きな漫画はありますか?(ミウ)

A:トキワ荘の先生たちの漫画はもちろん、林静一先生、つげ義春先生、ジョージ秋山先生、近藤ようこ先生の作品も大好きで集めています。最近の作品では『HUNTER×HUNTER』『七つの大罪』『いぬやしき』『HIKARI-MAN』を追いかけています。

Q:私は将来、キャラクターデザイナーとして働きたいと思っている専門学生です。今、私が悩んでいることは、自分の実力を周りの人と比べて、嫉妬したり妬んだりしてしまうことです。 「嫉妬は成長の大敵」ということを聞いて、今のままではいけないと思い、考え方を変えたいと思っているのですが、どうもうまくいきません。どうしたらいいのでしょうか? また、嫉妬や妬みはやはりだめなことなのでしょうか?(てら)

A:嫉妬が制作の原動力になっている場合は良いのですが、このご質問を考えてしまっているように、それが練習の妨げになる場合は、限りある人生の時間がもったいないですよね。ただ産まれた感情に関しては仕方がないので、どうせならその嫉妬の矛先をアマチュア(同級生)ではなく、プロに向けましょう。ほんとうの敵は、あなたが近い将来、座ろうとしている椅子に、名声を振りかざして、いつまでも座り続けているプロなのですから。でもちょっと待って。今のあなたはその人より技術がありますか? 椅子を譲ると言われても、同じ仕事ができますか? だったら今やるべきことがありますよね。その力を蓄えて、1日も早く椅子を奪い取ってください。

Q:イラストレーターを目指してるのですが、両親は余り快く思っていません。母親はデザイン関係の仕事してるので尚更なのかもしれません。中村さんは自分の子どもがもし、イラストレーターや漫画家になりたいと言ったら何と言いますか?あと、嵐の中で誰が一番好きですか?(紺野智暁)

A:結局は子どもの人生なので「家を出て、自分で生活費を稼ぐなら、何になってもいいよ」と応援します。嵐は共同体としての関係性が素敵なので、誰か一人には絞れませんが、やっぱり番組で作品を共作した大野 智さんには親近感があります。

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