第8回 ノート展 キャラクター部門結果発表

第8回の審査員は、博報堂のクリエイティブディレクター小杉幸一氏。過去にはPARCOのキャラクター「パルコアラ」を生み出し、サービスや商品の魅力を多数ビジュアル化している。「目的ではなく手段となる、魅力あるキャラクターと出会いたい」と語った
小杉氏は、どのような作品を評価したのだろうか。審査の様子をレポートする。

【大賞】あずきみみこ

*作品講評*
一目見た瞬間に、ストーリーがいろいろ浮かぶ魅力的な作品でした。食後の究極の選択「アイスかケーキか」の2人が仲よしだなんていいですよね。二人の関係性や前後のストーリーがいろいろと考えられる、オリジナリティある世界観だと感じました。絵のサイズや定着のさせ方、設定と総合的な解像度が高いですし、今のタッチの傾向に逆行する一点物感やほのぼの感にも惹かれました。普遍性のあるキャラクターだと思います。(小杉)

【準大賞】oimocororin

*作品講評*
キャラクターのルールが明確な方です。ポージングや背景の提示で世界を広げ、性格や設定、サイズ感を伝えていく。キャラクタープレゼンのお手本という見せ方でした。そしてこのワンタンの端の耳! 悔しくなるほどすごい発見だったので、名前ももう少し意識を向けてほしかったかな。(小杉)

【準大賞】にしまた ひろし

*作品講評*
とにかくうまい。技術やネーミング、設定と誰が見ても高評価であろう技量をお持ちです。特に感心したのは、普段忙しなく動くネズミを選んだ点。彼の意志がよく伝わるし、見る人にも「のんびりしよう」というメッセージが強く届く。設定やキャラクタライズに優れた作品です。(小杉)

【入選】青木純一

*作品講評*
ものすごく気になるとしか言えない作品です。今のキャラクターは機能的か魅力的かの2択ですが、言語化できない魅力の強さを再確認しました。ぜひ作家性を大事にして、この世界観でいろいろつくってほしいです。強烈なアート性があるので、必ずファンがつくと思います。(小杉)

【入選】Lacca

*作品講評*
絵が大好きなので選びました。不可解な部分も多いけど、それを超える表現力があるんです。今回の基準が単なる“好き”なら優勝していたかもしれません。絵にある設定やアイデアをわかりやすくコミュニケーションに繋げられると、よりキャラクターらしくなると思います。(小杉)

【入選】美八日ーみやびー

*作品講評*
名前のオリジナリティは断トツでした。ただ絵はまだ追求の余地がありますね。これだけのネーミングセンスをお持ちなら、名前をタイポグラフィ化してみると与える印象や世界観の強度が変わると思います。ポートフォリオも作品なので、細部にも目を配って仕上げてみてください。(小杉)

【入選】ふたみ

*作品講評*
うまいです! これならすべてのメディアでコミュニケーションできる、というくらいうまい。フィギュア感のあるタッチは多少好みが分かれるかもしれませんが、設定に説得力があるし強さもある。某商品のCMがすぐ浮かびましたね。準グランプリが3点なら絶対選んでいたと思います。(小杉)

【入選】手塚健陽

*作品講評*
一般的に賢者的な印象がある新聞を、社会を必死に学ぼうするキャラクターとして描くアプローチにオリジナリティを感じました。世界観は狭めですが、風刺画になりそうなメッセージ性があるのがいいですね。欲を言えば、性格やアイデアはきちんと絵で見たかったかな。(小杉)

【編集部賞】あんどうえりこ

*作品講評*
小杉さんが仰る問題解決能力やコミュニケーション力とはまた別の視点から、作家としての技量や表現力を評価して選びました。機能的ではないけど作品としてすてきですよね。表現の精度も高いので、デジタル系のメディアなどでアニメーション化したりすると面白くなりそうです。(三嶋)

●審査総評●

選考では「見る人が楽しめる世界観があるか、目的ではなく手段としてつくられているか」を基準に判断しました。これからのイラストレーターは、画の魅力はもちろんコミュニケーション力や提案力も必要です。あえての隙やネーミングなどキャラクターの要素を多面的に意識した上で、絵のプロならではの表現で魅力を伝えられると強いと思います。今回は、こうした要素が総合的に優れた作品を上位3賞に、何かの要素が突出した作品を入賞にしました。幅広い作風が見られて楽しかったのですが、もう少し個性の強い作品も見てみたかったですね。

■審査員PROFILE

小杉幸一 氏

ブランディング、イベントのほか、空間、テクノロジーを使った従来の型にはまらない広告のアートディレクション、アパレルブランドとのコラボレーションなど幅広く活躍。主な仕事に、資生堂「50 selfies of Lady Gaga」、SUZUKI「HUSTLER」、SUNTORY「特茶」、AGC「旭硝子はAGCへ」、KIRIN「一番搾り 」2011〜2017年、STARFLYER、ジャニーズ事務所「CI デザイン」、YMO40キャンペーン、TCC年鑑2016、PARCO「パルコアラ」、東急電鉄「出発進行!」、アットホーム「ウォーリーとさがそう!」、エンジャパン「エン転職」、築地玉寿司「もじにぎり」などがある。主な受賞に、東京ADC賞、カンヌライオン国際広告祭<金賞>、JAGDA新人賞、JAGDA賞、D&AD 、NYADC、ONESHOW GOLD、ACC賞、JRポスターグランプリ最優秀賞、準朝日新聞広告賞、ギャラクシー賞、ADFES グランプリ、釜山広告祭グランプリ、フジサンケイグループ広告大賞優秀賞、インタラクティブデザインアワード、Spikes Asiaなど国内外数多く受賞。

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